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    メルマガ国際平和 No.52         2004年08月22日
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  レベッカ・ティーチング・スクールを訪ねて   
        (2004年冬春号から転載)

                  国際平和協会理事 潮 厚宏

 レベッカ・ティーチング・スクールは日本に出稼ぎに来ている日系ブラジル人
子弟を対象に一昨年一〇月、群馬県大泉町に開校された。学校というより塾、補
習校といった方がぴったりのスタイルで、タバレス夫妻を中心に運営されている。
ブラジル移民が子弟に日本語を教えるのと同じように、今度は日本にやってきて
ブラジル語を忘れてもらいたくないという親たちの熱い思いがある。

 昨年六月、関東近辺で活動しているレベッカ校を、今後の文化活動を通じて広
くその支援対象にできないかと考え、伴理事とタバレス校長を訪ねた。道案内は
かつてサンパウロに在住し長年、日伯交流に貢献してきた尾和女史。通訳はミセ
ス永尾である。

 大泉町は日系ブラジル人が約四〇〇〇人在住する。うち子どもが一〇〇〇人で
ある。一つの小学校、中学校の規模の日系ブラジル人子弟が住んでいるというこ
とである。もちろん日本で外国人の比率が一番高い自治体でもある。

 東武鉄道を館林で乗り換えると乗客の会話にブラジル語が増える。大泉駅を降
りると出会うのは日系ブラジル人と思われる人ばかり。当地の日本人はほとんど
車で移動するが、自家用車を持たない彼らは徒歩か自転車を利用するしかないの
だ。四、五分も歩くと彼らが日常利用する大きなコンビニエンスストアがあり、
中に入ってみると「確かにここはブラジル」と感じさせる風情がある。食品、衣
料、日用雑貨を扱う店が活況を呈し、ブラジル人を対象とした旅行会社や引っ越
しサービスまでそろっている。街のレストランやバーも横文字のブラジル語が氾
濫している。興味を引いたのは肉屋で牛肉を「キロ単位」で売っていたことであ
る。

 大泉町で一番きれいで美味しいといわれているブラジルレストランで昼食をと
った。いろいろな肉をくし刺しにした名物料理シュラスコを注文したが、われわ
れ日本人にとっては多すぎる量で、まさにここはブラジルであることを胃袋に到
るまで実感させられた。

 さてレベッカ校である。生徒数は幼児から一七歳まで一五八人。遠くは埼玉県
や茨城県から通う。親たちは多人数が乗れるバン型の車を交替で運転してやって
くる。北関東の自動車や電機関連の工場では九〇年代に入っての人手不足で労働
力の多くを日系ブラジル人に依存しているが、子弟にブラジル語を本格的に教え
てくれるところは少ない。

 レベッカ校の先生はアルバイトも含めて八人。本国の小、中学校の全教科をブ
ラジル語で授業している。日本の習字やブラジルの武道で有名なカボエラを取り
入れるなど多彩なメニューとなっている。

 授業は月曜日から日曜日まであり、午前と午後のどちらかを選択するシステム。
日本の学校に通いながら週末だけとか放課後だけ通う生徒もいる。授業料は一人
月額三万円。二人以上が通う場合には割引もあるが、親にとって決して小さい負
担ではない。

 タバレス校長はもともとブラジルで小売業を営んでいたが、一九九二年、その
仕事に見切りをつけ、ブラジルで小学校の先生をしていた奥さんと、六歳と二歳
だった子どもを連れて出稼ぎとして来日した。奥さんは日系であるが、タバレス
校長には日本人の血は流れていない。

 日本にやってくるブラジル人の中には日本人の血が流れていない伴侶も認めら
れているため、一目見て白人や黒人、あるいは混血の人たちも少なくない。出稼
ぎのブラジル人がすべて日系だと思ったら大間違いになることは知っておかなけ
ればならない。

 タバレス一家が最初の住み着いたのは福島県だった。奥さんがブラジル人の子
どもを対象に家庭教師を始めたが、生徒数が少なかったため、ブラジル人が多い
大泉町に移った。

 当初は、自動車関連の工場で働き、奥さんはアルバイトでブラジル語を教える
程度で、ブラジルのニッケイ新聞のレポーターなどもこなしていた。最終的にブ
ラジル人をターゲットとした仕事をと考え、二〇〇二年一〇月に使われなくなっ
ていた工場建屋を改装し、本格的な学校経営に乗り出した。夫婦二人だけのプラ
イベイトスクールである。

 現在、学校の経営は生徒からの授業料でほぼ賄われているが、よい先生の確保
や充実した環境整備が課題という。全般にレベッカ校の学力は日本の学校と比べ
て低いレベルにあるが、これは生徒たちの問題ではなく、ブラジルの教育システ
ムの欠陥によるものである。例えば、ブラジルには「義務教育」について取り決
めた具体的法律さえないというのだ。

 また学校法人でないという問題もある。補習校で終わっている場合は問題が起
きないが、全日制で通っている生徒も少なくなく、これらの生徒たちが将来、
“卒業”してより高い教育を受けたいと思った時に補習校では「公的な資格」が
ないのだ。

 現在、ブラジル政府に対して、正式な学校として認知するよう働き掛けている
が、ブラジルではそもそも私立校に対する財政援助はないため、展望は開けてい
ない。できれば日本の学校法人として認めてもらいたいが、こちらの方はもっと
ハードルが高い。

 話を聞いていて悲しい思いをしたのは、子どもたちは学校に通うのが金銭的に
精一杯で、大泉町から出ることがほとんどないということだった。タバレス校長
は「一般社会の常識を身につけさせるためにも東京などで社会見学をさせたい」
という。せっかく日本に住んでいるのだから日本の発展ぶりとか楽しさも味わわ
せたいというのだ。

 母国語での教育の欲求は外国人であれば当然のことである。日系ブラジル人の
姿形が日本人と変わらないという点だけを見て、彼らがブラジル人であることを
見過ごしてはならない。日本に足りないのは異なるものに対する配慮である。
「単一民族」としてやってこられたのは過去のことでしかない。すでに中国を筆
頭に外国人人口が一〇〇万人を優に超えている。彼らは学生であり働き手でもあ
ると同時に住民でもあるのだ。税金を負担し社会保険料も支払っている。

 すでに外国人との融和策に乗り出している自治体も少なくないが、まだまだ努
力が足りない。一番不足しているのは民間の努力ではないかと思う。国際平和協
会では、今年度からなんとか予算をひねり出してレベッカ校に通う子どもたちと
東京の子どもたちを交流させる場をつくりたいと考えている。

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 国際平和協会設立60周年記念出版 http://www.jaip.org/kumada.htm

 昭和20年、賀川豊彦が設立した国際平和協会の精神。誰もが求めている
 人類の平和と社会福祉と家庭の幸福のためお役に立ちたいと考えています。
 60周年記念として協会最高顧問、熊田千佳慕『みつばちマーヤ』を出版。

 ワルデマル・ボンセルス原作、熊田千佳慕:文・絵、出版社:池田出版
 税込価格 2,000円 注文は mailto:kyokai@jaip.org

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 財団法人国際平和協会 編集責任:伴 武澄 mailto:kyokai@jaip.org
 バックナンバー http://www.pubzine.com/detail.asp?id=20632
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