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    メルマガ国際平和 No.43         2003年12月07日
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  企業の社会貢第4回 社員全員に「木を植えた人」を贈った社長

                   伴 武澄(共同通信社記者)

 大分前の年賀状で「去年読んでおもしろかった本」として3冊を上げたことが
ある。その1冊にジャン・ジオノの「木を植えた人」と書いた。南フランスのプ
ロヴァンスの荒れ地に毎日100個ずつ木の種を植え、森をよみがえらせた老羊
飼いの話である。

 こぐま社の「木を植えた人」の初版は1989年だから古い本である。いくつ
のも出版社から翻訳され、ビデオもできたというからすでに読んでおられる読者
も少なくないだろう。

 森がしげると雨が地中にたまり、やがて川となり、人々が住み着くようになる。
たった一人の地道な努力でも何十年続けることで、自然が変わり、町までができ
てしまう。そんなおとぎ話のような話だが、きっとどんな人のこころにも慈雨の
ようにしみ込むことだろうと思う。

 資生堂の広報の人と話をしていて、この「木を植えた人」が話題になったこと
があった。福原義春さんが社長だったときにこの本にいたく感動して、自費で社
員全員に配ったというのだ。

 福原さんは資生堂の創始者の孫に当たる方だが、父親は経営を引き継がなかっ
た。だからどこかの会社のような二世、三世社長ではない。実力で社長になった
人だと信じている。アメリカ資生堂の立ち上げで食うや食わずの苦労をし、社長
に就任した直後に、販売子会社につけ回していた大規模な在庫を買い戻した英断
で80年代後半、マスコミでも取り上げられた。

 その時の言葉は忘れたが、「子会社に在庫を押しつけて親会社の決算をきれい
に見せかけても仕方がない」というようなことだったと思う。今年から日本でも
ようやく導入された連結決算という考え方を10年以上も前からすでに持ってい
た。おかげで資生堂は大規模な減益決算を余儀なくされ、当然ながら連続増益記
録も途絶えた。バブルの真っ最中の出来事である。

 90年代には化粧品の値引き販売が始まり、河内屋の樋口社長らにより価格拘
束という独禁法違反で告発された。カネボウやコーセーなども同時に告発された
が、トップ企業と言うことで矢面に立たされた。当初、資生堂は裁判で徹底抗戦
する構えだった。

 福原さんは筆者が取材を通じて知った経営者の中で数少ない信頼できるトップ
の一人だった。それまで正義の福原が一転マスコミでたたかれる対象となるのだ
から、構造改革というのはむごい部分もある。そんな感慨を持って、福原さんの
真意を問うためにインタビューを申し入れたこともある。

 会社経営がすべて善行によって行われるとは思っていない。社会的規範も時代
のすう勢によってどんどん変わるから、前の時代に当たり前のことであっても、
当たり前でなくなることも多くある。1990年代は日本という国の中で企業経
営に対する価値観が恐ろしいほどに変わっていった。そんな時代だったのだと思
う。

 企業の経営とは、そんな価値観の変化をどう先取りしていくかが問われる役割
であるはずだ。日本がバブルに酔っていた直後に、この「木を植えた人」を社員
に読ませていた社長がいたということは嬉しいことだった。

 福原さんは、「木を植えた人」を贈るに際して社員に一文を添えた。

「ことばは心を運びます。私はこの「木を植えた人」という本をかりて皆さんに
私の心を贈ろうと思います。そして私自身がこの本を大切に「木を植えた人」の
心を考えつづけます。・・・私たちもいっしょに、まず会社に中に木を植え、そ
して会社のはたらきを通じて社会に木を植えていきたいと思うのです」

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 財団法人国際平和協会 編集責任:伴 武澄 mailto:kyokai@jaip.org
 バックナンバー http://www.pubzine.com/detail.asp?id=20632
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