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    メルマガ国際平和 No.36         2003年08月25日
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  現代版メジチ家・フィリップモリスの社会貢献

                    伴 武澄   

「私はフィランソロピーについて『アフリカの水場の動物みたいなもの』と社内
に説明している。野ネズミはどこでどれくらい水を飲もうと自由だが、ゾウはそ
うはいかない。どこに立って飲むかさえ気を付ける必要がある。他の動物に迷惑
をかけてはいけないからだ。ゾウは責任ある態度で示すだけでなく、他者から見
て責任ある立場で行動していることを理解させる必要がある。それが社会貢献の
原点だ」

 フィリップモリス(現在Altria Group, Inc.)の文化スポンサーシップ担当役
員に企業の文化社会貢献について聞いたことがある。この会社はいまでこそタバ
コと食品の世界的コングロマリットだが、1960年代、バージニア州の小さな
タバコ会社にすぎなかった。そんな時代からポッブアートという分野を育ててき
た。米国での企業フィランソロピーの草分け的存在として、売上高が10兆円に
なったいまも文化創造の旦那衆的存在である。ニューズウィークはフィレンツェ
のメジチ家にあやかって同社を「コーポレート・メジチ」と称したことがある。

 1960年代、米国では多国籍企業への批判への高まりから「社会的責任論」
として企業によるフィランソロピー活動が台頭した。米国ではもともと民間が経
済や文化の発展の担い手として発展してきた経緯がある。強者として、あるいは
富む者としての義務が問われ続けた社会でもある。権利だけを追い求めた戦後の
日本社会との成り立ちの違いがある。

 バブルの絶頂期の1990年、日本でも財界を中心に「企業メセナ協議会」が
設立された。米国にはそのような企業団体はないが、英国にABSA(芸術助成
企業協議会)が生まれたのが76年。フランスのADAMACAL(商工メセナ
推進協議会)の設立は79年だった。戦後、どこの国でも産業が高度化し、富が
企業に集中するようになった。フィランソロピーの担い手は個人から企業に変わ
りつつあった。

 日本の企業メセナ協議会は参加企業に対して売上高の1%相当の社会貢献事業
を提言した。大蔵省は金融機関の接待攻勢には積極的に応じていたが、文化や社
会貢献への関心は低く、経団連が求めた法人税の軽減には一切耳を貸さなかった。
米国の社会貢献の非課税枠は所得の10%。フランスは売上高の0・1103%。
日本の非課税枠は資本金や利益額で換算するためややこしいが、欧米の3分の1
から8分の1でしかない。

 どう考えても欧米より日本の方が企業中心の社会である。米国では法人税の最
高税率と個人所得税のそれはほぼ同じ。日本の企業役員の給与が欧米と比べて格
段に低いのはこの税制によるところが大きい。役員専用車や接待費を会社経費で
落として、その分役員報酬を低くした方が役員に有利なのだ。余談だが、税制こ
そが社会を変える根元となる証左がここにある。日本が企業中心ならば、社会貢
献もより多く企業に依存するのが道理ではないだろうか。

 日本の企業による「交際費」は2001年度でまだ3・9兆円もある。誤解が
あるかもしれない。交際費が非課税なのは中小企業だけである。対して政府の文
教予算は年間4兆円である。これは教職員の給与も含めた額である。企業社会は
課税ベースの「交際費」のほかに会議費や販売促進費などの名目で把握不可能な
くらいの接待費を浪費している。

 日本の企業税制が社会貢献に不利に働いていることは確かである。税制は政府
の問題であるが、企業の巨額の接待費を考えれば、その10分の1でも、20分
の1でも社会貢献活動に支出できないはずがない。日本にも「コーポレート・メ
ジチ」が欲しい。

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 財団法人国際平和協会 編集責任:伴 武澄 mailto:kyokai@jaip.org
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