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    メルマガ国際平和 No.35         2003年08月17日
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 七〇年代初期、タイで高僧になった日本人
 
             アジア・ジャーナリスト 松田 健
 
 映画『戦場に架ける橋』でも知られるタイ西部のカンチャナブリ。そこから
323号線をさらに百十キロほどミャンマー国境に向かったサイヨック(SAI YOK)
のはずれの山中に、日本人僧侶が六人、タイ人僧侶も十人ほどが常駐する『ワット
(寺)スナンタワナーラーム』寺がある。バンコクの中心部からこの寺まで二四〇
キロだった。

 タイのお寺はこの『ワット(寺)スナンタワナーラーム』のように山の中にある
寺(ワット・パー)と町の中にあるワット・バーンがあり、儀式が多いワット・バ
ーンと異なってワット・パーでは修行の場を提供しているところが多く、大地に野
営しながらの出家も多いという。仏教国として有名なタイでは二五万人の僧侶がい
るが、この『ワット(寺)スナンタワナーラーム』も他のタイのほとんどの寺と同
様にサンガ(仏教界)に属している。寺の名の『スナンタワナーラーム』には、大
きな喜びという意味があり、バンコクに住むタイの青少年がわざわざ遠いこの寺に
やって来て出家したケースもきわめて多数に上っている。

 『ワット・スナンタワナーラーム』境内は歩くのが疲れる広さがあり、本尊はタ
イのスコータイ様式の三メートルほどの仏像が正面に置かれている。建物はキリス
ト教の教会を連想させるモダンなもの(写真)で、他に総計で五〇〇人が宿泊でき
る建物が敷地内に散在している。国立公園内に属する国有地でアチャン・カウィー
サコ師の寺を作るためサトウキビ畑に植林した。一五〇〇ライ(約二五〇万平方メ
ートル)の敷地があり、ゾウなどの動物も棲んでいる。

 日本人のアチャン・光男・カウィーサコ師がこの『スナンタワナーラーム』寺を
代表している。この日本人アチャン(タイ語で先生とか師を意味する)は、『シバ
ハシ』姓の岩手県雫石出身の方。タイの高僧として知られるアーチャン・チャー大
師のワット・パー・ポング寺の第一一七分院がアチャン・光男・カウィーサコ師の
『ワット(寺)スナンタワナーラーム』で、師は去る五月二八日に五三歳になった。

 日本の高校生時代から海外への脱出をなぜ考えていたのかについてアチャン・カ
ウィーサコ師は、「当時は大学を中心にしてどこも紛争中の時代でした。私はそん
な日本で大学に進む気持ちにはとてもなれなかった。そこで世界に出て修行しよう
と日本を飛び出しました」という。

 岩手県で地元高校を卒業して初めて日本を出る前、アチャン・カウィーサコ師は
母から「世界のどこに行こうとかまわないがその国の警察の世話になることだけは
しないように」と言われたことを肝に銘じていた。そしてまず目指したのはインド
だった。ヒンドゥー教の聖地である北部のリシケシに行って一年間にわたるヨガの
修業を重ねた。

 しかしインドでは修行者に対しても長期滞在のビザの条件が厳しくネパール、ド
イツ、アメリカなどを放浪してからタイにやって来た。タイではウボンラチャタニ
に外国人の修行者が僧侶として出家できる寺があり、アチャン・カウィーサコ師も
そこで二三歳の時に出家した。

「五三歳になりましたから、これまでの人生の半分以上をタイで過ごしたことにな
ります」という。日本の両親はすでに他界している。高校を卒業し、仏教関係の催
しに参加するため、一五年ほど前に日本に帰国したときに会ったのが母との最後だ
った。

 アチャン・カウィーサコ師はこの五月初旬、在日タイ大使館が東京で開いたタイ
料理のプロモーションの会への出席などのために日本に一時帰国した。 

 ニコニコしながら気さくに話すアチャンの言葉には重みがある。

「物事がうまくいかないことを他のせいにしてしまうのではなく、自らの知恵で静
かに落ち着いて物事を判断する時間をもつことが大切です」

「人は世界各地の料理みたいでもあります。辛いといわれるタイ料理やインド料理、
またフランス料理も中国料理もそれぞれに特徴があります。自分が好きだから良い
のではなく、美味しくなくても体に良い料理もあるように、料理の味にこだわらな
いでいれば、人は世界のどこに行っても幸せでいれるのです」

 アチャン・光男・カウィーサコ師は、低迷する日本の現状についての印象を伺っ
てみた。とくに教育面や日本の若者が人生の方向を見失っている人が多いことにつ
いてアチャン・光男・カウィーサコ師は、「日本に閉じこもっていては自らも世界
も見えては来ないでしょう。日本を飛び出して、自分のそれまでの人生を見直して
みることが一番です」とアドバイスした。

最近、『ワット・スナンタワナーラーム』で、タイ全国の町長一二〇〇人が、一
回に一六〇人、八回に分けてこの寺にやってきて瞑想したが、これまでに六〇〇〇
人を超える人がこの寺で瞑想修行をしている。

 山奥にあるお寺であるだけに、托鉢には足元が明るくなった早朝に歩いて山を越
えて出かけるときもあれば町まで車で出かけて行ってから行うこともある。

ミャンマー国境のチェーデイ・サームオン(三仏峠)までは約百五〇キロ。その
ミャンマー側にあるお寺の孤児院に頻繁に出かけて一〇〇人ほどの孤児の世話をし
ていたこともある。

『ワット・スナンタワナーラーム』で会えなかったが、現在は日本から悩みを抱え
てやってきたという若い女性も一人で滞在して瞑想している。アチャン・カウィー
サコ師に座禅中に居眠りすると日本の禅寺のように板で叩くのですかと伺ったとこ
ろ、そのような罰はなくここでは個人の自由にまかせた座禅が行われているという
ことで、散策しながらの瞑想も行われている。

 アチャン・カウィーサコ師が人生相談にのったあとはその人の状態に応じて林の
手入れ、農作業などすべきことを指示するが、瞑想することを命じることがほとん
どだという。

「日本などの生活ではいつもテレビやコンピュータやゲームの音がしています。そ
のような環境では自ら見つめなおすことはできません。静かな自然環境の中で瞑想
してこそ自らを見つめなおせるのです」とアチャン・カウィーサコ師。

 このお寺を支える『マーヤー・ゴータミー財団』が一九九〇年に設立されており、
アチャン・光男・カウィーサコ師が名誉会長。日本とバンコクに事務局を構え、学
費に困っているタイの家庭の小学校から大学までの総計で数千人に奨学金を援助し
てきた。植林、一般人向け九日間の瞑想、タイの中学校に通学用の自転車を多数贈
呈する活動なども行ってきた。

 問い合わせなどは、マーヤー・ゴータミー財団
 東京都品川区南品川三−五−一七 電話〇三−三四七四−三四九五、
 盛岡市 テレビ岩手内ダーナの輪の会事務局 電話〇一九−六二四−一一六六、
 バンコク MAYA GOTAMI FOUNDATION,
 378 Arkarn Songkroa Sai, 20 kor, Sathon, Bangkok, 10120. Tel 02-676-3453)

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 財団法人国際平和協会 編集責任:伴 武澄 mailto:kyokai@jaip.org
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